傾聴の歴史はフロイトから始まる
前回は、「お話を聴くことの大切さ」という視点から紀元前4世紀まで遡りました。
では、傾聴そのものの研究が確立していったのはいつ頃からなのでしょうか?それは今から約130年ほど前、フロイトの時代へと遡ります。
1890年代。オーストリアの精神科医ジークムント・フロイトは、同じく精神科医であったヨーゼフ・ブロイアーの患者であったアンナ・Oの治療ケースに注目します。アンナは極度の神経症に悩まされていましたが、「治療の中で過去の出来事を思い出しその出来事について話すと、不思議なことに症状が軽減していく」という体験をしていきます。
この「過去を思い出し、語るごとに症状が消えていく(その当事者であるアンナ・Oはこの不思議な体験を「お話し療法」と呼んでいたそうです)」という現象に注目したフロイトは、ブロイアーとの共同研究を開始し、のちにカタルシス療法、自由連想法と呼ばれる治療法を確立していきます。
こうした研究からフロイトは、自分の心の中にあるものを言葉にして語る(言語化する)ということは「人の心の健全性に繋がる」ということを学術のベースではじめて発表するに至ります。このようなフロイトの治療観が「お話をよく聴くこと=相手を元気にする」という今日的な傾聴観にも繋がっているのです。
現在日本で語られる傾聴には様々な意味や思いが込められています。しかし、そもそものところを紐解いてみると、こうしたフロイトの治療観が傾聴研究の出発点と言えるのではないでしょうか。
※画像:wikipediaより引用
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